「あんなの、本気じゃないから。」
耳元で呟くと、マコが笑った。
「知ってる。最初はびっくりして悲しかったけど、すぐ嘘だってわかった。」
「なんで・・・?」
「アキラ焦ると眉間にシワが寄るもの。怒った時も考え事してる時も寄らないけど、焦ってる時だけ。」
すべておみとおしだ。俺すら気付かない俺のクセ。思わず笑う。
「私も大っ嫌いなんて嘘だからね。」
「知ってる。」
「なんで?」
「教えない。」
「なにそれぇ!」
ガバッと顔を上げたマコと見つめあって同時にふきだす。
しばらく大笑いしたあと、手を繋いで家路を歩いた。
左手に小さな手。右手にはおでん。
「おでんありがとう。今度何か買ってやるよ。欲しいもんあるか?」
「あるっ!」
即答したマコを見下ろして先を促すと、真剣な顔で言った。
「マグカップ!」
意外な答えに言葉を詰まらせると、マコはわざとらしく溜め息をついた。
「やっぱりわかってなかったんだ。怒った理由。」
黙ったまま続きを待つ。
「・・あのマグカップは、同棲記念にアキラが買ってくれた大事なものなの。私以外が使うなんて許せなかったの。」