白いレースのカーテンが背中を滑って、華波は目覚めた。
いつもとは違う、真っ白な朝だった。
隣には夏生が静かな寝息をたてている。
タオルを手に、ベッドから立ち上がると、夏生が薄目を開けて鼻をすすった。
「おはよ。もう起きたのか?」
「うん。用意しないとね。映画見に行くんでしょ?」
顔を洗って鏡の中を覗く。いつもと変わらない自分。でも、明らかに違う自分。気持ちだけで走ってしまう悪い癖を客観視できずに、夏生と一緒にいられる今を幸せに思うしかなかった。
「目玉焼きにする?」
「昨日のステーキおいしかったなぁ、料理うまい男っていいね!」
「いい肉といいスパイスといい鍋があれば出来るの!お前は大切な客だからな。」
客か。
確かに、急な訪問客かもしれない。
スーツケースひとつで会いに来た華波を見て、驚いた顔をした夏生は、いつものあったかい笑顔で「よく来たな。」って迎え入れてくれた。
真っ黒に焼けた笑顔はあの時のままだった。
都会には不釣り合いな感じではあったが、大好きな夏生だった。
親に嘘までついて、東京にまで来てしまった。
そんな自分の大胆さと、情熱に驚いた華波だった。
離れて、初めて知った。
こんなにも好きだということに。