かずやは友人の後ろについて行った。
10分程歩いただろうか、おじいさんの足が止まった。
「おい!あれ家じゃねぇか??」
友人が声を潜めながら指を差した。
友人の指差したその先には、雨や泥などで玄関の入り口、家の壁などが汚れた木造の家が見えた。
元々人口が少なく若い人がいないこの村には、嫁いでくる人もいない為昔ながらの木造の家が多い。
その中でもおじいさんの家は特に目立って古く見えた。
「入ってくぞ!」
おじいさんはリヤカーを庭に入れ、ビニールシートを被せるとパンの入ったかばんを持って家の中に入って行った。
友人はつぶやいた。
「そうかぁ…ここかぁ〜にしても古くさい家だなぁ〜」
そういうと友人は更に家に近付いていった。
かずや「おい!見つかる…おい!見つかるって!!」
おじいさんにばれないようにかずやは声を潜めて友人を止めた。
しかし、友人にはこの声は届いていなかった。
友人はどんどん家の方へと、ばれないように腰を曲げ低姿勢で近付いていく。
ガラッ
戸を開ける音がし慌てて友人は隠れた。
遠くでみていたかずやも、軽くしゃがんで電柱に身を隠した。
どうやらおじいさんは家の外へ出かけるらしい。
おじいさんの姿が見えなくなると、友人は立ち上がり手招きした。
「入ろうぜ。」
かずやの耳元でそう囁くと友人はそっと玄関を開けた。
かずやはヤリスギだとは思ったが止めはしなかった。
噂のこともあるが、あのおじいさんが普段どんな生活をしているか気になったからだ。
友人の後ろから家の中に入る、まず人の家独特の臭いがした。
かずやの親戚のおじいさんの家に似た臭いだ。
靴を両手に持ち中へと進む二人。
もはやイタズラの限度を超えていると、二人ともわかっているのに、気付けなかった。
そのいけないという心は、如何におじいさんにばれないように部屋を覗くか、
という気持ちに押しつぶされていた。
「仏壇だ…」
友人がつぶやいた。
友人とかずやが今いる部屋には仏壇と、仏壇の横にある古い真っ黒になった本棚しかなかった。
「だれの仏壇かな??…」
友人は部屋を見渡しながらいった。
仏壇には1978.6.14
と何か難しい字で書かれた位牌が置いてあった。