「おおっ!」
姫は鬼神の如き強さを見せ付け、観衆を沸かせます。敵ながら天晴れ、流石です!
私は様子見のつもりで、ほとんど防御姿勢を取り続けていました。そんな私が逃げ腰に見えたか初心者見えたか、ヤジが飛び交います。
「お〜い!初心者なら乱入すんなよ〜!」
ふ…甘い…甘過ぎです!てめえら、この向かいに座っているお方を誰と心得る?!天下のエミル姫ですよ?!
一回ぐらい勝たせてあげないと、可哀想じゃないですか!あぁ、私って何て優しいんでしょう!
なに余裕かましてんだと言われるかもしれませんが、姫はまだまだ精神的に未熟。揺さぶりに弱く、自分の攻撃が当たらないだけですぐにペースを乱します。
「こ、こいつすげぇ!」
ふふ、だから言ったでしょう?!結局勝負は私の勝ち。拍手が起こります。
「いやぁ〜負けちゃったよ〜!」
姫の声が近付きます。
「ねえ、君ってゲーム歴長……い?え…?!」
「さぁ!帰りますよ!」
私は有無を言わさず姫の首ねっこを掴み、煩い姫は全力で無視して歩き出します。
「ねぇちょっと!クレジットまだ残ってるよ?!もったいないって!ていうか何でそんなに強いの?!さっきのコンボ教えてよ!ねぇ!だめ?ケチ!いいもん、隠しキャラの出し方教えてあげないから!え?いらない?そ、そんな事言わずに!分かった!貴方だけにこっそり教えてあげるから!だからさっきのコンボ教えて下さいぃ〜!わぁああああん!」
引きずられながら半泣きで暴れ叫ぶその少女を、誰が天下のお姫様だと考えるでしょうか?
私はこの国の未来が心配でなりません…。