中には内なる不協和音を、外に向けさせる為に、「仮想敵」としてその脅威を利用しようと試みる勢力もあった。 人類共通の暦―銀河元号二一八七年・帝国紀年六六年第二期四六日。 統合宇宙軍は、独立星系国家パレオスに宣戦布告した。 双方の軍事バランスは、パレオス一0に対し帝国側は六七0以上。 始める前から勝負は決まっている。 第一、二00年以上も、経済繁栄と非戦平和を享受して来たパレオスは、まともな星間機動部隊「ユニバ―サル・タスクフォ―ス」等、持っている分けがないし、持とうともしなかった。 同星系は帝国領パレオスとして、新たな支配に服するのは時間の問題と、統合宇宙軍中央はそう楽観していた。 そして事態は、確かに彼等の目論見通り、九割方まで推移したのだ。 しかし、ここで予想外の事態が発生した。 優に、一万光年の彼方から、星間軌道「スタ―レイル」を利用して、孤立したパレオス星邦を救うべく、大艦隊が出現したのだ。 銀河中央域の雄、一千の恒星系を束ね、二三0億の星民を擁する星系合衆国「ユナイティド・システムズ」の各加盟勢力が、先を竸って送り込んだ、連合艦隊の艦列だった。 蟻を相手にしていたつもりが、象を相手の喧嘩になってしまった。 いきなり危機に追い込まれてしまった帝国は、決戦か屈服かの二者択一を迫られた。