叫び声が建物に木霊する。
受付の入口からホッケーマスクを被ったあの男が現れる。
ゆるりゆるりと俺の前へと近付いてくる。
男『ヨォ、また会ったナァ、ヒヒヒッ!』
その手には木刀が握られている。
貴博『カッコいい刀はどうした?あれ一本しか持ってなかったか?』
奴の武器が予想していた物より随分と見窄らしかったので内心安堵した。
男『キヒッ、ひひっ!クくク!クククッ!』
男は肩を揺すりながら笑っている。
俺はメリケンサックを両腕にはめた。
貴博『……もう叶呼を付け狙うのはやめろ』
最後の説得…いや、忠告だ。
男『…あ?』
俺の問い掛けに一時笑うのを止めたが。
男『ウヒヒャカカカ!』
また狂ったように笑い出した。
貴博『…っ!』
俺は一歩踏み出した。
笑い続ける男の顔、つまり仮面に拳をぶち込む。
男『グっ…!』
マスクの眉間のあたりにヒビが入った。
突き出した状態の右手を、すぐに引いて腹に。
男『グゥ!…ガハッ』
腹を押さえてお辞儀をした男の口から、唾液が流れ出た。
貴博『ふざけてるからだ。この糞仮面!』
差し出された頭をつかみ、顔面に膝を打ち付けてやった。
男『ッ!あァ!』
男が持っている木刀を振り回してきたが後ろに下がりそれをかわす。
男『…アー、イテェいてぇいてぇイテェ!』
男が突進して来た。
木刀を低い位置から振り上げてくる。
昨日に比べれば狙いも切れもない。
貴博『どうした?その程度じゃ――』
軽く左に体を反らし避けた俺の顔に何か近付けられた。
貴博『ッ!?あぁぁ!』
目に針でも刺されたような激痛が走った。
両手で目をこすりスキだらけな姿を晒す。
前に倒れそうになるが足を前に踏ん張りそれを堪える。
男『コノ程度でぇ、ナンダッて?オイ!イッテみろよ!』
後頭部に衝撃があった。
体中が重くなった。
男『ひゃはハははハはっハァ!』