帝国統合宇宙軍は、総旗艦〈スタニドルフ〉に、大本営を置いている。 大本営は、幕僚部と作戦部とに分かれていて、それぞれを左総旗・右総長が統括している。 歴代皇帝は、この二大部局の上に屹立し、全ての統帥を司る。 集団指導体制時代に組織改革が行われ、大本営次長職が設けられ、皇帝の事実上の代行を務める事になっていたが、これは権力闘争の成果よりも、戦役と機構の大規模化に対応した措置であった。 〈スタニドルフ〉は全長三000M・一G下基準排水量二四00万t・帝国の威信を懸けて建造された、超弩級戦艦であった。 その主兵装たる、亜光速実弾「SLSB」超加速誘導溝・合計八基は、全稼動すれば、一撃で完全武装の軍艦最大一000隻を葬り去る、破壊力を秘めていた。 この巨体の中で、平時七000人・戦時二0000人もの乗員が、勤務に従事している。 現在では、設計上の枠を無視して、六000人の民間人を含む、三六000人が生活するに至っていた。 いざ出陣の暁には、この内九000人が、艦を降りる約束になっていた。 近未来形のオフィスに、多少毛の生えた程度―これが統合宇宙軍大本営の最高幹部連の会議スペ―スだと知ったら、誰しもが驚くだろう。 しかも、この場所で、皇帝臨席の御前会議まで行われるとあっては。 それでも、安全と機密は、この艦でも、最も厳重に管理されてはいた。 大本営次長職を務めるスコット=ウォルガ―ドは、統合宇宙軍の最高幹部に召集をかけた。 深青色の生地に純白の縁取りの、帝国戦時用・第二種軍装で身を固めた、参謀連や提督連が、続々と集まって来る。 それだけではない。 既に、統合宇宙軍の機動戦力の大部分が、〈スタニドルフ〉の周囲に参集して、艦列を組んでいる。 六個宇宙軍・凡そ一三000隻の艦船が、五七0万以上の将兵達が、大本営の決断を今や遅しと、固唾を飲んで見守っているのだ。