夏。
セミの声が耳に響く中わたしはお寺の石段を登っていく。
右手にはアキラの好きだったヒマワリの花を持って。
わたしは、一週間前、彼氏を事故で亡くした。
「来てやったぞ、アキラ」
まだ新しい墓石の前にしゃがみこむ、お線香の燃えかすや花を見る限りわたしより数時間前先客が着ていたみたいだ、たぶん依然親しかった後輩か友人たちだろう。
「暑いね」
一人墓石にいいかける。
葉月アキラとわたし、川那(かわな)菜(な)月(づき)は見渡す限り山に囲まれた雛(ひな)崎村(さきむら)で生まれ育った。