夜の怪。我が血肉となり

夜色  2006-01-05投稿
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「ねえ早苗、また生徒が行方不明だって」
部活を終えて暗い校内を歩く途中、私を待ってくれていた親友に言った。前を歩く私が突然止まったものだから、泣き虫の早苗は声にならない表情だ。
「そ、そそそ、そんなの知ってるよう。真希ちゃぁん、どうしてそんなこというの?」
そう、物騒な話だが最近学校周辺で若い女性が行方不明になっている。初めの事件をきっかけに一人歩きした殆んどがデマの噂だが、その中のいくつかは本当に起きている。
「あはは。心配ないよ。早苗は私が守ってあげる」
手を差し出すと、勢いよく掴んでくる。
「真希ちゃんは・・いつも頼もしいね」
「ほら、もっと近くによりなよ」
顔が触れそうなくらいまで早苗を引き寄せる。その綺麗でかわいい顔に見とれた。
「真希ちゃんって、綺麗だよね・・」
見つめあう状態で、口にしたのは早苗のほうだった。一瞬だけ頭が真っ白になる。
「そ、そう?ありがと早苗」
「ううん、私こそ。でもどうして、生徒が行方不明になるのかなあ?」
そしてようやく私が待ち望むタイミングが来た。
「きっと殺人犯が死体を隠しているのよ。切り裂きジャックっていたじゃない。ああいう頭が狂ったのが出没しているんだわ」
「や、やめてよ、真希ちゃん!」
案の定、もっと体を寄せてくる。ふふふ、本当に反応がいいんだから。
「でも分からないわよ。本当にそうだったらどうするの?例えば、すぐ隣の友人が・・」
「えっ?」
私はしがみつかれていない方の腕で鞄から鋭利なナイフを取り出し、喉を突き刺す!
「!!」
早苗はわけがわからないまま沢山の血液を私に浴びせて倒れこんだ。
「あははは。何のために引き寄せたか分かった?一瞬で死ねて幸せだったでしょう?」
そう今までの事件も私。大好きだから殺してきた。
「あはははは」
闇に酔うように笑う。

「あははは、やっぱり真希ちゃん素敵」

・・・?

後ろから聞こえるはずの無い声。

振り向くと体の変な場所から飛び出た肉がうごめく、怪物がいた。
「私じゃない事件の謎がとけたよ。噂じゃなかったんだね。真希ちゃんを食べようと近付いたのに逆に襲われるとは思わなかった」
「さ、早苗、あなた」「でも私の勝ち。化け物を打ち倒すのはいつも人間だけど、その逆もまた然りだよね」
「や、やめ」
「頂きま〜す♪」
「きゃああぁっ!」
そして今日もひとり少女は消えた。



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