―飲酒運転―の信号無視。
丁度通り過ぎた私達の車。
愁の父親の乗っていた助手席と、
相手の運転席が衝突。
奇跡的に助かったのは…私と愁だけだった。
相手の運転手も、死んだのだった。
私は、熱いコンクリートの上で。
愁は、冷たい車内の中で。
何を考えていたのだろう。
誰も動かない。何も言わない。
誰も、何も…。
幼かった私と愁。
そのときの感情を、言葉になど表せなかった。
何もいえなかった。
何も聞こえなかった。
私と愁は、
野次馬でにぎやかになっていく世界の中で、
見つめあっていた。
冷たくなった母の
腕の間から。
そして、何も考えず、
何も言わず、
ただ、
涙だけを流した。
涙だけを
流した。