『わかりました』
その一言が､何を意味するのか、 それはﾂｷにとって親に捨てられるのと同じ事だった｡ﾂｷは悲しかった｡その瞬間､一気に自分の中の何かが､音を立てて崩れ落ちた｡その､“何か” は自分自身でも､よくわからない。でも多分､今までのｵｯｻﾝへの想いだろう と、ﾂｷは思った。
『やだ………いやだ！！』ﾂｷは走り出した｡ﾁｨは必死で追い掛ける｡階段を猛スピードで駆け上がり､ﾂｷが屋上へいこうとしているのがわかった。屋上には、長い長いスライダーがある。そしてその行く先は、地下通路。このスライダーﾀｳﾝは､町全体の下に地下があって､災害時の避難所とされている。そのまた行く先は隣町。ﾂｷはこの町自体からも逃げようとしているんだ。ﾁｨのカンはあたった。ﾂｷはスライダーの入口に立って叫んだ
『ついてくんな。』
『やだ』
即答された。ﾂｷは少し間を置いてもう一度､わざとゆっくり言った。
『つ い て く ん な｡ﾁｨは逃げる必要ないじゃん｡』
ﾁｨの目は､真っすぐﾂｷの方を見ていた｡諦める気はないみたいだった。
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