この時間に来客などはめったにない。
少年は父だと思った。
今日は残業だったのかぐらいにしか思っていなかった。
少年は何故だか父を驚かしたくなった。
キッチンの電気を消し、真っ暗な部屋のドアの後ろに隠れ、父がドアを開けるのを待った。
ドンドンドン
父がドアに近付いてきた。
しかしそのままドアは素通りし、二階へと上がって行った。
少年は眠いからすぐ寝るのかな??
そう思いバレないようにすぐに後を付けた。
ドンドンドン
ゆっくり階段を登る父
少年はそーっと近付き驚かそうとした瞬間、違和感を感じた。
父ではない。
この暗闇の中ハッキリしたことはわからないが、その後ろ姿、はたまた後ろから見える顔の感じまですべてが父には見えなかった。
少年に衝撃が走った。
懐中電灯を持っていた。正確には頭にくくり付けるタイプの懐中電灯をその人はしていた。
暗闇に目がなれると、次々と奇妙な出で立ちが目に飛び込んできた。
服装が、軍服のようなものであり、右手に何かを持っていた。
右手の何かがわかるまでにそう時間はかからなかった。
刀
刃がむき出しになった刀をその人は握りしめていた。
少年は恐怖した。
その人の向かう先は両親の寝室へ向かっていった。
止めなきゃヤバい。
母が殺される。
そう思った少年は恐怖に打ち勝つため、自分の太ももを思いっきりつねくった。
しかし震えは止まらない。
しかしその人は歩みを止めない。
ドンドンドン
両親の寝室に近付いていくその様はまるでジェイソンか、はたまた殺人鬼そのものだった。
少年は覚悟を決めた。
階段をその人が上がりきったそのとき、後ろから思いっきり階段に向かってその人を投げ飛ばした。
ガンゴンガンドンドス!!
凄まじい音と共にその人は階段のしたまで一気に落ちていった。
少年はかつてないほど震え上がっていた。
もし、起き上がって襲ってきたら?
もし、階段の下から銃で打ってきたら??
少年はいろいろな妄想をしてた。
何よりも怖いこと。
それは起き上がって自分に近付いて来ることだった。
まだ震えている足でゆっくりと階段を降りる。
歩くのがやっとだ。
いや、歩いていると言うよりは、尻で這っているに近かった。
階段の下では懐中電灯が無残にも割れその破片を照らしている。