揺れていたアインの視界がただただ白くなる。
「ジーク…お前が、父オローを!!」
「そうだ。」
アインの中で、何かが蠢き、爆ぜた。
毒で機能しない、
手を、
足を、
何かが突き動かす。
「アイン、貴様は余の野望の障害となりえる、一思いに死ねぃ!!」ジークは剣をアインに振り下ろす。
が、しかし。
アインはそれを片手で受け止めた。
そして、立ち上がる。
アインの全身は青白い光を纏っていた。金色の頭髪も白く染まる。
ガルルル…と低く唸り、剣に手をかける。
鈍い衝撃が伝わってくる。剣と、剣ではないものが投げ出される音。
「貴様…!」
ジークの声で我に返った。
いつ、自分は剣抜いたのだろう?
「どこに…そのような力が!?」
剣を握ったままの腕が床に転がっている。
ジークが右肩を押さえているのが見える。
本来ならばそこにあったはずの…腕。
アインは怒りで何かの力を開放し、ジークの右腕を切り落としたのだ。
「誰か!誰かおらぬか!」
ジークの声を合図に背後の扉が開く。ここに来た時にはいなかったはずの兵士が駆け込んでくる。
ジークは一時的に、警護の兵士達を遠ざけていたのだ。
万が一アインとのやり取りが扉越しに漏れたら困ると考えたに違いない。そして、
事が終わるころに呼び戻す手筈を整えていたのだろう。
「反逆者アインを捕らえよ!」
ただ、一つだけ思惑通りにはいかなかった。
アインを仕留め損ねたことだ。(そう簡単に思い通りにさせてたまるか。俺は反逆者じゃない、ジークこそが全ての黒幕だ!そう叫んでやる。)兵士達に本当のことを暴露してやるのだ。が、
それは言葉にならなかった。
思うように声が出ないのだ。
これも毒のせいなのだろう。
ジークが平気で兵士達を呼んだ理由が知れた。
(だめだ。このままでは反逆者として殺される…。)
とっさにアインは身を翻した。ふらつく足を必死でなだめ、別の扉から通路へ飛び出した。
続