最後に二人が会ったのは、合格祝賀会のあとのプロムでだった。
帰る時間になって、華波は夏生を会場の外へと連れ出した。
泊の港で、二人は抱き合った。
せっかくキレイにお化粧したのに、
華波の顔は涙でぐちゃぐちゃになった。
「上等なスーツなんだから、鼻水つけるなよ(笑)」と言って、優しく抱きとめる。
「もう、会えなくなる?」
「生きている限り、会えるから。」
「明後日、出発なの。空港へ来てくれる?」
「わかった、行くから、泣き止んで。」
華波は、初めてのキスを期待した。
夏生は泣き止んだ華波の顔を見ると、
「ブッサイク(笑)」
と、笑って目をそらした。
これから離れ離れになるのがわかっている相手に、そんなことはできなかった。
強く抱き合った後、震える肩を離して、ターミナルへと歩いていく。
車に乗り込むと、角を曲がるまで手を振る夏生。
背を向けて、雑踏に消えた瞬間、
華波は車の中で大泣きした。
母親が小さくため息をついた。
そんなため息をかき消して、華波の泣き声はわんわんと車の中に響いた。