「何をしている!追え!」
アインの背後で駆け出す気配がする。
(逃げなければ…)
アインはひたすら走った。目が霞み、足元が揺れる。それでも走った。外に出れば、レグナがいる。
不意に行く手を阻まれた。騒ぎを聞き付け、兵士達が集まってきているのだ。
「おい!そいつを捕まえろ!」
背後から叫び声がする。目の前に立ち塞がってきた兵士は、すでに剣を抜いている。
「おれ…は……」
しかし、相手はアインの言葉など端から聞く気は内容だった。
いきなり剣が振り下ろされる。アインはやっとの思いでそれを受け止めた。
"ガキィン!!"
あと少し、剣を抜くのが遅れていたら確実に斬られていた。
「俺は反逆者じゃない。頼むから剣を引いてくれ!!」
必死で訴えたところで、通じるはずもない。二度、三度と剣振り下ろされる。
そのたびに腕に痺れが走る。
受け止め続けるのも、もう限界だった。
背後からも足音が迫っている。
アインは相手の剣を弾き飛ばし、まっすぐに斬り下ろした。
血飛沫が上がる。
そのまま振り返り、背後から斬りつけてきた相手を横に薙ぎ払う。「ぐはぁ…」
続けて、また一人。
立て続けに三人を血の海に沈めると、アインは再び走りだす。
人を斬った。それも、ためらうこともなく。いや、
最初に剣を向けたときはまだ、ためらっていた。だから剣を引いてくれと念じた。
『アイン。剣とは人を殺めるためのものではない。人を守るためのものだ』
亡きオローにそう教えられていたから、剣を抜いてもすぐには斬れなかった。が、一人斬ってしまうと、ためらいなど消えてしまった。
続く二人はまるで魔物でも斬るかのように、容赦なく切り捨てた。同じ騎士団の仲間だというのに。
「こっちだ!!アイン」
自分の名を呼ばれ、反射的に振り返る。
聞き覚えのある声。
蒼い長髪が目立つ親友のジャックだった。
アインはジャックがいる通路側へと駆け出す。
返り血を浴びたアインの姿を見てジャックは口を開く。
「なにやらかしたんだ?」
二人は走る、通路の出口に向かって。
通路を抜けた先は外だ。
「ジークを敵に回した。義父オローはあいつに殺された」
「なっ…!?」
今は驚いてる暇じゃない。アインを逃がさないと。
そして、二人は外に出た。
続