今日は6年間お世話になった小学校の卒業式。
正装した友達が家族をつれて体育館に入って行く。
声を掛け合ったり辺りを見回したり。
式が始まる前は皆思い思いに行動していた。
「亜弥!可愛いじゃ〜ん」
亜弥は心友のマミに声を掛けられた。
「マミこそ雰囲気ちがーう」
照れながらも返事を返す。そんな中で亜弥はある人を探していた。
人込みの中をかきわけ、やっと見つけた。
「篠崎浩太〜!」
亜弥が叫ぶと呼ばれた相手は振り返った。
「おー亜弥。」
「お母さんはぁ??」
「PTAのおばはん達と喋ってる。」
「てかさー普通に照れるんですけど!」
浩太と呼ばれた男は亜弥の彼氏だ。
小学正で彼氏なんて早いと思うかもしれないが、今の時代これが普通なのだ。
「皆さん、席に着いて下さい。」
教頭の高い声が体育館に響き、
ざわついていた体育館が一気に静まり返った。
「あ、じゃあまた後で」
小声でそう言い残すと亜弥と浩太は急いで席に着いた。
これから中学へ行ってもこんな生活が続くんだと思っていた。
そして卒業式は無事終わった。
卒業式が終わると同時に静かだった体育館はまたざわめき始めた。
亜弥は浩太のもとへ走って行った。
浩太は友達と喋っていたらしかったが、
友達も彼女を見つけたらしく浩太に手を振り去って行った。
亜弥は人目を気にしながらも浩太を体育館の隅に連れて行った。
「はあー中学生かっ」
ため息混じりに言う。
「俺、すげぇ楽しみ」
浩太は小さい頃からサッカーをやっていて、中学でのサッカーの部活を楽しみにしていた。
にこやかに言う浩太を見て自然と頬の筋肉がゆるんだ。
「中学行っても一緒だねっ」
「………。」
突然、浩太の顔がゆがむ。
「どうしたの?」
「俺…サッカー本格的にやりたいから、だから、県外のサッカー名門中に行く。」
とまどいを隠せなかった。
「中学、離れちゃうんだ…でも、愛があればっ」
亜弥はおどけて見せた。
「別れよう。」
浩太の口から出たその言葉にただ呆然と立っていることしか出来なくなった。
「そんな…別れなくてもサッカーできるよ?」
浩太は何も答えなかった。
浩太は亜弥よりもサッカーをとった。