クレオンの説明は続いた。 『現在、大本営は、星系合衆国軍と対峙しつつ、情報収集に当たっておりますが、敵連合艦隊は、パレオス星系入りし、着々と防御の布石を、打っている模様です』 ここで、クレオンは、右総長に目配せした。右総長レイモンド=フォア=ギニエ―ルは、統合宇宙軍生え抜きの猛者にて、実戦部隊の最高指揮官だった。 『俺は職柄上、断定的な事しか言わない。敵戦力五0000隻の内、信用できるデ―タで照合すると、純粋な機動戦力と呼べるのは、二0000隻と言った所だ。だが、これよりも、寧ろ脅威になるのは、残り三0000の支援艦船群の方だ。何故だか分かるか?』 レイモンドは、ここで言葉を止めて、居並ぶ一同を見渡した。誰もが誰も、非戦闘艦艇なら、猟犬の前の羊も同然、やり易くていいじゃないか、何の冗談だ、これは?とでも言いた気な顔をしている。右総長は意味深な笑顔を示した。 『組み立て式のプラント群を、多数確認したんだ。後方支援群の内、実に一0000がこう言った設備だ。食糧・弾薬・資材・エネルギ―。艦艇の整備・補修は言うまでもない。戦争に必要な全てが、ほぼ半永久的に賄える事になる』 これに、パレオス星系の資源と生産力を組み合わせれば、恒常的な軍事拠点を建設する事になる。 戦闘による人的損失も、六五00万人を抱えるパレオス星民を訓練すれば、現地で補充は可能だ。 当地の産業を組織して、その内、艦艇・兵器の製造まで始めるかも知れない。 帝国全域の制圧と、恐らくはその滅亡―そこまでの覚悟と考えとがなかったら、ここまでの用意はしてこなかっただろう。 ここで、再びスコット次長が、話を引き継いだ。 『どうやら敵は、俺達に余程の恨みがあるらしい。最も、この宇宙で、大した恨みも理由もなしに、戦争をふっかける輩は、幾らでもいるがな』