「あの…村崎さん。」
無駄に冷たい風が吹き抜ける、11月初旬。
私は初恋の人に声を掛けられた。
それも、かなり唐突に。
「な、何?」
周りには、誰も居ない。
窓の外で、冷たい風に唆された葉が、しくしくと、落ちて行くだけ。
それもそのはず。
もう、放課後になってから、2時間は経っているもの。
私がグルグル考えている間じゅうも、彼はじっと私を真っ直ぐに見つめている。
トロトロとした静寂が私達をしっとりと包み込み、都合の良い空想を誘う。
しかし、その空想もあながち間違いじゃないかもしれない…。
放課後の教室で2人きりで、彼は何か言いた気だ。
やはり、このシチュエーションと言えば…
「あの…さ…」
しっとりとした静寂を引き裂いたのは、彼だった。
同時に私の空想も掻き消える。
「何?」
「前から言おうと思ってたんだけど…」
早鐘を打ち始める心臓。
口の中が渇く。
自然に拳を握る。
さあ、来い!
初恋の人コト舞前君!最後の一言をさぁ!
「えっと…背中に何か憑いてるからさ…お払いとか行った方が良いと思う…そ、それだけ!じゃ、じゃね!」
…。
はぁ?
もう一度言う。
ここは、誰も居ない放課後の教室。
外はもう、太陽がおさらばしかけていて…
私は何か大層なものを憑けているそうだ。