家に帰り父親の帰りを待つ。『繭は?』『すみません。帰らないと言うものですから』『お前が甘やかすからこんな事になったんだ。』と叱咤される。言い返す言葉も見つからない。私は自分を責め続けた。
真夜中、けたたましく電話がなった。『警察ですが、繭さんはお宅のお子さんですか?』『はい。繭が何か?』『シンナーを吸っているところを補導しました。今すぐ署の方に来てもらえますか?』『えっ?繭がですか?すぐ行きます』シンナー?何?どうして?
そんな思いが頭の中でグルグル回っている。また繭の父親に怒鳴られるのを恐れ、私は一人で警察署に向かった。
警察署で、繭を見た。我が子なのに、すごく遠くに感じる。『繭さんは、初犯ですし反省してるみたいなので今日のところは、おうちに連れて帰って下さい』私は、何度も何度も頭を下げ繭を車に乗せた。シンナーを吸った事よりこれで家に連れて帰れると、ほっとした。車の中にシンナーの臭いが充満してくる。
『寒くない?』『腹減った』『ファミレスでも寄る?』『うん』ファミレスの店員が怪訝な顔をする。シンナーの臭いが、辺りに漂っていた。