「今よ。反撃、マコト! 殴れ!」。
物凄く腰が引けたまま、右腕がゆっくりと真っ直ぐ伸ばされ、
相手の顔に触れた。そしてまたゆっくりと折り曲げられる。
格闘マニアの美幸にも何の技なのか判らなかった。
相手も驚いている。
「まさか、今のパンチ?」。思わず口に出る。
あれでは万に一つも勝てない。
武器は使わない主義なので、防具Iにも装備していない。
どうする。逃げるか。
「バッキ!」。マコトの膝にローキックが決まった。
しまった。関節はガードしてない。
マコトが膝から崩れ後ろに倒れる。
相手が馬乗りになった。
「まずい」。美幸は電柱の後ろから飛び出した。
相手の背後から、後頭部目掛けて太ももラリアート!
「ドガッ!」。決まった。一発KOだ。
女子校生の生太ももで決めて貰えてさぞかし嬉しかっただろう。
捲れ上がったスカートを下ろしながら振り返った。
「ゲッ!」。唸りながらも立ち上がろうとしている。
太ももじゃなくて脛にすれば良かった。
「ウォー」。吠えながら突っ込んで来た。
野獣かお前は。
伸びて来た左足の内側にローキック。「バッシッ!」。
少し前かがみになったところを喉に右アッパー。「ドコッ!」。
相手はそのままうつ伏せに倒れた。
今度こそ決まった。
白目を剥いて口からは泡までもだしている。
マコトは倒れたまま。ほったらかして行きたいところだが、
こいつが捕まって調べられるとコッチの身元がばれてしまう。
抱き起こして、肩を貸しながら逃げる。
こいつは駄目だ。もっと強い男を探さないと。
痛む足を引き摺り、泣きじゃくりながらマコトが言う。
「ごめんよ。俺あんなに強い奴とケンカした事無くて。
ブルッちまって、何も出来なくて。」
ブッチ!。美幸の中で何かが切れた。
「何言ってるの。アイツは只の下着泥よ。
体格だってあんたの一回りは小さい奴を探して来てやったのに。
役立たず!」。そう言って、マコトを放り投げた。
マコトは飛ばされて、頭からごみ箱にナイスシュート。
それからマコトは、防具Iを外され更にボコボコにされた。
防具Iの事は口外しない事を約束させられた後もなお殴られた。
美幸は次の男を物色し始めた。防具Iに相応しい男を。
次は誰だ。