運命夢想病 第二章

秋りんご  2006-11-14投稿
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ラッシュ時間にしては始業時間に30分前に到着した。社長室の掃除をしながらスピーチの内容を考えた。…ルルル…ルルル…内線が鳴った。「宮本係長!正面ゲートに社長お見えになりました!」受付の植木から慌てたように連絡が入った。「分かりました。ありがとう」゛今朝は社長早いわね…珍しい…゛そう思いながら麻美は掃除機を手早く直し。いつものように正面玄関に車が到着するのを待った。要するに゛お出迎え゛である。地場産業で、伝統ある創業も県下でも5番内に入る老舗会社。社長も幼いころからのお金持ちってところだろう。家族経営で組織は身内に成り上がり、御用聞き役で支えてる商店ってところだろう…。「おはようございます!昨日は遅くまでお疲れ様でございました!お荷物をお持ち致します」元気ハツラツ、最高の笑顔で迎えた。麻美は毎朝この場面になると゛私は女優よ゛と気持ちを切り替えて、女優秘書の宮本麻美を演じている。それが麻美にとって一日のスタートにもなるし、気が引き締まるのである。「おはよう。今日も元気ね。どこからその笑顔が出てくるのかしら…大荷物がトランクにもあるから、澤田次長に、応接室へ運ばせて」…「はい!かしこまりました!」…麻美が言い終わる前にはすでに運転手の澤田はへこらへこらしてこの場から早く抜け出したいかの如くトランクからゴルフバックと三越デパートの紙袋を両手両肩に担いでエレベーターに運んでいた。毎日の光景なのに…゛澤田次長も退職までそうないし、奥様とお子様が居て、良い歳なのにあんなことされて可愛そうだわ…゛麻美は上司である澤田を尊敬でなく…あんな風には自分はなりたくない、御用聞きには絶対ならない、と日々思っていた。「そうそう、確か今朝のスピーチはあなたの番だったわよね!楽しみにしてますよ。会社に利を意識した話か…、そうね…社員の態度を改めさせるような内容を期待してますよ」社長は振り返りニヤリと麻美を見てそう伝えると社長室へ入って行った。゛またスピーチテーマまで指定されたわ…何なのこの会社は!ったく、だから役立たずのイエスマンしか揃わない!゛麻美は腹立たしくなった。今朝はどうしても言いなりには成りたくない…徐々ににこの変な社風を変えてやる…何かを言わなきゃ!麻美は思い付いた。社長の地位と権限を利用して自分の理想を現実化して行く方法を…。麻美は頭を切り替えて静かに朝礼大会議へ向かった。

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