それから、月日は流れ、私が入学して一年が経った。あれから、水無月先輩とメールは続いている。メールの内容は、たいてい部活に関係ある話が多い。先輩は、忙しいのかメールの返信が遅かったり、来ない日も時々あったけど、メールができるだけで嬉しかった。今年も、総体の時期がやってきた、そんなある日、いつものようにコートに行き、着いてみると、松田先輩と水無月先輩が二人で楽しそうに話しているのが見えた。こんなことは、去年からたまにあった。だけどこの日から、この二人の先輩が一緒にいるところを見るだけで、恨みに似た嫉妬を抱くようになった。松田先輩は、私が水無月先輩を好きなことを知っているのに、なぜそんな風にできるのか理解できない。口では、応援するから頑張って!みたいなこと言っといて、応援する気なんて元からなかったのだと、その時気付いた。なんてばかだったんだろう・・・。恨んでも恨みきれないくらい、悔しくて、悲しくて、涙が零れそうになったけど、慌てて拭ってコートに向かった。その日のことは、言うまでもなく頭の中でグルグルといろんなことが駆け巡って、周りのことが見えなくなっていた。部活が終わり、家に着くと、自分の部屋に閉じこもり、朝まで泣き続けた。もちろん、声は出さず静かに泣いた。学校に行くのも嫌で、部活も辞めようと考えていた。だけど、親に心配かけたくないから出来なかった。そして、またいつもの一日が始まった。友達に悟られないように、精一杯の空元気を出していた。でも、蘭だけは、私の不自然さに気付いたのだ。その日の放課後、蘭に全てを打ち明けた。蘭は、私の話しを静かに聞いてくれて、何も言わず、ただ私が泣くのに付き合ってくれた。それから、蘭は、別れ際に「何でも一人で抱え込まないで。私でいいなら、いつでも相談にのるから。私と優香の仲じゃない♪」と笑顔で言ってくれた。言葉にならない程嬉しくて、また泣いてしまった。今思えば、あの時の蘭の言葉がなかったら、私は、今この世にいなかったかもしれない。その頃、悲しくて、苦しくて、辛かった。でも、私は、「自分は、なんて幸せ者なんだろう。」と思った。それは、きっと蘭の存在があったからだろうと思う。それから、少しして、水無月先輩に告白した。返事は予想通りだった。「好きな人がいるからごめん。」と言われた。その返事を聞いた瞬間、肩の荷が下りたような気がした。