通路を抜けた先には広場でレグナが舞い降りようと、降下していた。
近くを飛び回っていたら騒ぎを聞き付けたのであろう。
「レグナ…!」
安堵したのか、アインはその場で崩れそうになる。
慌てて、ジャックが支えようとする。
「レグナ、この場を離れよう。俺はもう…ここにはいられない」
返り血を頭から浴びているアインの姿を見て、レグナには状況がわからないはずがなかった。
「承知した。潮時なのかも知れぬ。ここは儂にも窮屈すぎた」
うまく力が入らない体でレグナによじ登る。
レグナの背に乗り、アインはジャックへと手を差し出す。が、拒否された。
「オレはここに残る。アイン…行け。」
いつになくジャックは真剣な表情をしていた。
「そうか。ジャック…またな。
さっき抜けてきた通路から無数の足音が聞こえる。追っ手がもう迫ってきている。長居はできないらしい。翼を広げる。
「飛ぶぞ、小僧。しっかりつかまっとれ!」
地面から離れていく。ジャックの姿がだんだんと小さくなる。
そして空の彼方へと飛び去った。
アインが飛び去っていく姿をジャックは見上げながら、最後まで見送った。
(アイン…次会ったときは、敵同士だ!)
後方から大勢の兵士達が駆け付けてきた。
「反逆者は…!!」
兵士達が辺りを見渡す。
「いないよ。今、逃げた。ドラゴンに乗って。」
不意にジャックが答えた。
兵士の一人がジャックに詰め寄り、その胸倉を掴んだ。
「なんだと!?貴様ぁ!!何故逃がし…」
兵士はジャックを見るなり、胸倉を掴んだ手を慌てて引き戻した。
が、突然その兵士は頭から切り裂かれ、真っ二つになった。
左右の半身が別れて崩れる。
片方の半身は炎に包まれ、もう片方は音も無くばらばらになった。
いつの間にか抜いていた剣を鞘に納める。
「うっせぇよ…」
その光景を見ていた兵士達は怯えたの表情を浮かべながら、その場にひざまずく。
「し、失礼しました!!ジャック蓮隊長殿!」
ふん、と鼻を鳴らしジャックはその場から立ち去った。
その口元には笑みが浮かんでいた。