「ねぇ、あの人誰?」
「高林君だよ。同じ高校の」
話によると、彼は常に学年で五本の指に入るほどの成績をキープしており、スポーツ万能でサッカー部のエース。おまけに見てくれもよく、話も面白く、女子に人気だそうだ。
「彼女いるの?」
恐る恐る尋ねてみたが、Y美はたぶんと口をにごらせた。少なくとも学校と予備校にはいないらしい。
しかし、大層モテる彼に彼女がいないわけはないのだが、皆よく知らないそうだ。
「ウワサも流れているんだけど、どれもまちまちなのよねー。学校とか容姿とか」
「ふぅん」
どうやら確固たる証拠はないが確実にいるらしい。しかし、もうすでに私の腹の中は決まっていた。
翌日の英語の授業で私は偶然を装い、彼の隣の席に座った。
「すいません、ここいいですかぁ?」
「あっ、どうぞ」
彼は笑顔で返した。
後は、いつもの作戦だ。とにかく笑顔を振りまく。彼の話には興味を示す等々。
そして、努力をし続けた結果、数ヵ月後、彼のほうから告白してくれた。
―続く―