朝起きて父と自分の弁当を入れる。かれこれこういう朝を送るようになって1年と4ヶ月がたった。
同時に母が出て行って1年と4ヶ月がたった。
僕が起きて一階へ行き卵を2個とウインナーを取り出した頃、玄関から「行ってきまぁす」と、寝起きの悪そうな声が長く冷たい廊下を通り聞こえてくる。最近進学校とぽつぽつ声が上がる私立高校に通い、2年生で僕とは違いとても美形な次男、修児である。彼の弁当は彼の彼女の沙希が作っているらしいが、実際は彼女のお母さんが作っているらしい。なんと言ったら良いのか・・・
そして弁当が出来上がる頃に二階から大きな足音をたてて父がおりてくる。「何か手伝おうか」足音の割りには特に大柄でもなく恐いこともない父に黙って手を動かしながら首を横に振る。
そのやり取りをしていると、さっきの足音を合図に下2人の妹と弟を起こす祖母の声が聞こえてくる。
僕はこの2人を合わせた4人兄弟の長男なのである。
祖母は早くに旦那を亡くし女手一つで父と伯母さんを育てててきた。
小学6年と4年の2人が着替えだすと同時に弁当を包む。祖母は相変わらずあれやこれやと下2人の身支度に口を出している。窓のカーテンの隙間から暖かくさし込む日光と同じように、ビーグル犬のラックの不思議そうな視線がそれを捕らえる。
あれは夏休み前のことだった・・・2005年7月15日浜田家から一人の家族が抜けた。
あの日からこんな朝は始まった。