新年度のあたたかい春過ぎのある高校の廊下・・・とても長い髪の毛をなびかせながら写真部の部室前を歩いているのは高校2年の母。久美である。その写真部の扉から出てくる少し目つきの悪い1年の和輝、父である。
これが二人の出会い。とてもベタではあるが・・・一つ先輩の久美の一目ぼれであり、その日から久美の猛烈なアピールは始まった。
久美の社交的な性格とは反対に、おとなしく人見知りの激しい和輝。久美からすれば和輝の予想以上の人気以外、特に和輝の気持ちを中心にすべては久美の願望通りにことは進んでいった。
二人の通う高校と久美の家のちょうど真ん中に和輝の家はあった。そしてまんまと久美のアピールにはまった和輝は、太陽がなかなか上がってくることのない夏の朝も、まるで雪が積もっているかのように霜が下りている寒い冬の朝も・・・性格上とても行届いた手入れをされた自転車に乗って和輝は学校とは真逆の久美の家までわざわざお迎えに行き登校した。