ふいに、春香は拓也を見た。その時、拓也の顔に何かが映った気がした。なにかはわからなかったが、直感的にイヤな予感がした。
見間違いかと思い、春香はきつめに瞬きをした。その様子に気付いた拓也が、心配そうにこっちをみてこう言った。
「どないしたん?どっか痛いん?」
春香は、大丈夫やでといいながら、さっきの拓也の顔に映ったものの事について考えていた。
(さっきのは、なんやったんやろ)と心の中で呟いた。
拓也は、楽しそうにお子様ランチを食べていた。映ったものは、春香が今まで見たことないどす黒い渦のようなものだった。春香はそんな不思議なものについて考えている内に、ミックスグリルが冷めかけていた。
拓也が、お子様ランチに付いている国旗つきの爪楊枝を興味深げに見つめていた。その時、見つめていた爪楊枝がポキッと折れた。
ア然として、拓也が春香にこう言った。
「母ちゃん、ボクなんもしてへんで!ほんまやで!」
春香は冷や汗をかきながら、うんと頷いた。それから、首を傾げた。
「どうしたんやろな。こんなこともあるもんやんな」と、冷静を装いながら自分と拓也を納得させるように、何度も頷いた。
そんな不思議な事が起こってからは黙々とご飯を食べた。続