“カランッカラン”
「いらっしゃい」
カウンターの向こうでヒゲを生やした太っちょのおじさんが二人を見ていた。
「失礼ですがこの男をご存知ないですか?」
中野がポケットから一枚の写真を出しておじさんに見せた。
「いらっしゃい」
「いや、あのですね。
この方を・・・」
「いらっしゃい」
おじさんは中野の目を見ながら、
「お客さん。ココは喫茶店ですよ」
「やれやれ。私の負けです。歩さん何か頼みましょう」
中野はため息まじりで声を漏らした。
二人はカウンターに座った。メニューに目を通している。
「私はアイスコーヒーで。私はコーラが欲しいです〜。後、パフェも」
歩は嬉しそうに注文している。
「わかりました」
おじさんもさっきとは違ってとても笑顔だ。
それを見て中野はまた
ため息を漏らした。
「さっきの男なら一昨日うちに来ましたよ」
おじさんが思い出したように話し出した。
「本当ですか!何処へ行くとか話してませんでしたか」
中野は食いつくように問い掛けた。
「どうだったかな〜
なんかもう少しで思い出せそうだな〜」
おじさんは横目で中野を見た。中野は肩を落とした。
「歩さん。なんか頼んでいいですよ」
中野は疲れた。厄介な店で聞き込みしてしまった、と。
「まいどあり〜」
二人を店を出た。
「よかったですね。いい情報貰っちゃいました」
歩は上機嫌。
「そうですね。私もまさか喫茶店で財布を空にするとは思ってもいませんでした」
あの後、歩はまたパフェとサンドイッチに他多数頼んだのであった。
「まぁとにかくこれであの男を追えますね」
「そうですね」
中野はもう泣きたかった。