子猫があたしの膝の上でじゃれている。
矢田は顔色一つ変えずそこにいた。
状況がよくつかめていないあたしは、
目が点になってる気がした。
「…ハァ!!?何それ?」
「さっきからお前ハァばっかだな。」
矢田は膝でじゃれている子猫をあたしから
取り上げ自分の膝に坐らせた。
「拓真さんは俺の義兄。俺の姉ちゃんの
旦那さんってことだよ。」
「ふ、ふ〜ん。だから何よ?」
「何も。」
矢田はこの後、あたしを責めたりしなかった。只、子猫の遊びに付き合ってあげて
いた。そして何も言わず去っていった。
矢田がいなくなってしばらくして先生が
迎えに来た。何だか変な気分のまま
言われるがままに先生の車に乗り込んだ。
先生と遊んだ後、家まで送ってもらい
帰り際にキスされた。いつもなら嬉しい
はずなのに今日は複雑な気分だ。
「それじゃな。」
「うん。気をつけてね、先生。」
先生は車を走らせ夜の暗闇に消えていった
あたしは鞄を開けた。そこには子猫が
気持ちよさそうに寝ている。
「持ってかえってきちゃったよ…。」
子猫を放置できず鞄に入れてきた。
部屋に入り子猫を鞄から出すと気持ちよさそうに伸びをしあたしの膝へと移った。
子猫を見てなぜか矢田を思い出すあたしが
いた―\r