万華鏡(3話)

飛水  2006-11-17投稿
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「えーっと‥木崎凌(きざきりょう)君ね‥。何でここを選んだの?」



今から30分前、
予定時間ギリギリに到着した俺は7畳ほどの部屋に案内された。面接官は50代であろうおやじが1人。首元にはうぐいす色のネクタイをしっかりとしめている。デカイ眼鏡が険しい顔でこちらを見ている。

俺は今、実家近くにある居酒屋の面接を受けている。

事の始まりは今から一週間前にさかのぼる。

突然、お袋から電話がきた。

「‥ク‥クロが‥クロがね‥、い‥ぇに帰ったら‥階段の前で‥‥つめ‥た‥く‥なって‥て‥。
ゎ‥たし‥もう‥‥だ‥めだ‥よ。
‥‥凌‥、おねが‥ぃ
帰って来て!」
っと涙ながらに話した。


俺が物心がついた頃には親父はすでに死んでいた。
だから女手一つで俺らを育ててくれたお袋には今でも頭が上がらない。
最近、お袋は用もないのに頻繁に電話をよこす。

瞬(しゅん)のこと以来はとくに‥だ。

今回の愛犬の死で、より精神的に不安定になっているようだ。

‥今は特にやりたいこともないし、親孝行でもするかと思い、東京での一人暮らしに別れを告げ、地元、神奈川に帰ってきたというわけだ。



「‥では採用であれば後日連絡するから。」
「ありがとうございました。」

重苦しい部屋を出、エレベーターで1階へ
扉が開くと温かくて気持ちいい風が頬に当たる。


そういえばあいつ‥どうしてるだろう。

あれ以来‥連絡とってないな‥

‥‥‥‥‥。

‥なぁ、美月‥
  俺のこと‥
  ‥まだ恨んでるか?

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