「ユキ、帰るぞ。」
イツキが廊下の窓から顔を出して叫んでいた。
「ちょっと待ってっ!!」
私は慌てて机の中から教科書やノートを引っ張り出してかばんに入れる。
クラスのみんなと「じゃあね。」と笑顔で別れてユキミゎイツキを追いかけて玄関まで走った。
靴箱の前ではイツキが棚に寄りかかって待っていた。
「お前はいつも遅ぇな。」
イツキが笑いながら言う。
そしていつものように手を差し出す。
「いっチャンが速いだけだもん。」
私は少し膨れて見せた。
そしていつものように手を繋ぐ。
いつもと同じ幸せな時間。
もうすぐ1年になる。
こんな日々がいつまでも続くと思ってた。
高校1年の秋。