ﾄﾞｱを開けて1人の男がﾊﾞｰに入ってきた。
何があったのだろうか、かなり疲れた顔をしている。
男は手近な席に座った。
ﾊﾞｰﾃﾝが男に近付き男に言った。
｢御注文は？｣
｢水割り｣男は素っ気なく言った。
｢かしこまりました｣そう言ってﾊﾞｰﾃﾝは水割りを作り男に出した。だが、男はなかなか手をつけなかった。
｢お客さん、どうしたんですか？｣ﾊﾞｰﾃﾝは微笑を浮かべて聞いた。
その顔に男は妙に親近感を感じた。そして男はﾊﾞｰﾃﾝに語り始めた。
自分が親友からある物を預ったこと。そしてそのすぐ後にその親友が変死したこと。その翌日から変な男たちが自宅を見張るようになったこととそのために家族をおいて家を飛び出したこと。そして家に帰りたいが帰れないこと。
｢そうですか…ではあなたのために特別にｶｸﾃﾙを作りましょう。｣そう言ってﾊﾞｰﾃﾝはｶｸﾃﾙを作り出した。
｢どうぞ。｣ﾊﾞｰﾃﾝは男にｶｸﾃﾙを出した。
｢ﾜﾝﾌｫｰｻﾞﾛｰﾄﾞです。｣
｢ﾜﾝﾌｫｰｻﾞﾛｰﾄﾞ？｣
｢家に帰るために飲むお酒という意味です。｣
｢そうなんだ。｣そう言って男はそのｶｸﾃﾙを一口で飲んだ。次の瞬間、男は眠るように動かなくなった。
ﾊﾞｰﾃﾝは男のｽﾞﾎﾞﾝのﾎﾟｹｯﾄからﾗｲﾀｰを出すと、それを叩き割り中からICﾁｯﾌﾟを取り出した。
次の日、男は家に帰った。
冷たくなって。
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