トナカイは空を飛ぶ

ユメ  2006-01-08投稿
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「初恋の人をなぁ、探してきてはくれんかぃ?」
夜の公園で遭遇した酔っ払いのじいさんはそう言った。独り身の私は寂しさもあって立ち止まってしまった。しかもこのじいさん、真っ赤なセーターを着ていて目立つのだ。
「探してって…今からですか!?」
「あったりめぇよォ。ここにホレ、写真もあるってのよ。」
じいさんはゴソゴソとポケットを探り、くしゃくしゃの紙切れを取り出した。暗くてよく見えないが、かろうじて写真だとはわかった。
「しかしですねぇ、写真だけでは…」
押しに弱い私にとって断りづらい状況だ。
「お!探してくれるのかい!そうと決まれば話は早い。今から行っとくれ。」
背中を押されて仕方なく歩き出した。全く自分勝手なじいさんだ。振り返ると、不思議なことにもうじいさんはいなかった。
街へ出るときらびやかな電飾に目がチカチカした。それで思い出した。
今日は─クリスマス・イブだ。
さっきじいさんに手渡された写真をよく見てみようと取り出す。
あっと声を上げそうになった。
そこに写っていたのは─ミヨちゃん。私の初恋の相手だった。
何だか思いがけないプレゼントをもらった気がして、気持ちがふんわり暖かくなった。
メリークリスマス、じいさん。



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