欲しいのは、彼の有する資格と権限、そして、その由来となる祖国の潜在的影響力。 外交戦のカ―ドとして、確かにこれは重要な意味を持っている。 併せて、陰に陽に、共和国宙邦が、パレオス・トップにコミットメントしている事を、内外にアピ―ルする、絶好の契機を演出できる。 少なく共、表面上は、議長と星邦・両者に取って、大きなプラスになるのは、間違いない。 マキャヴェリズムの定理から考えても、これは、寝技の類に属しただろう。 しかし、パレオスの今置かれた状況から見れば、野心や術策で、こんな手を思い付いた訳ではないのは、明らかだった。 侵略に晒された故国を救わんとする、気迫めいた何かが、そこには感じられた。 『御理解して頂きたいのは…』 リクは、彼なりに、威儀を正しながら、慎重に言葉を選んだ。 『本朝も、共和政体の端くれ、法規と制度を無視しては、動けません。全てに置いて合議が必要とされ、独断専行は最悪、国への裏切りと見なされます』 『その点は良く解ります。お互い分からず屋を納得させなければ、何事も進まないシステムですからなあ』 立場も経歴も、グイッチャルディ―ニ氏は、リクの数百倍分は苦労の体験があるのだろう。 遠くを見上げ、今までに飲まされた、煮え湯、噛まされた苦虫の数々を、一つ一つ思い起こす様な表情を浮かべて、ある意味、伝えようとした本人以上に、深く鋭敏に、理解を示してくれた。 『私の同行者と、協議する猶予をお与え願えますか』 『もちろんです。同じ決断でも、紛糾よりも合意を得るに越したことは、ないですからな』 少年の申し出を、議長は快諾した。