彼女を突き放した理由は簡単でね。
この先彼女の人生が僕の世話をして終って欲しくなかった。
僕はのたれ死ぬ覚悟だった。
こうして飲まず食わずならいつかは死ぬ。
そう思っていたある日、懐かしい声で目が覚めた。
目の前には彼女がいたんだ。
彼女は家を出てきたと言った。
結婚しようと彼女は言った。
断ろうと思っても彼女はそうはさせてくれなかった。
それから生涯彼女は本当に良くしてくれたんだよ。
もう一度キャンパスの前に座って。
頭の中の絵をそのまま紙に写した。
彼女が色を出してくれた。
僕はいつのまにか盲目の画家として有名になっていた。
もう笑顔が戻っていたよ。
全部彼女のおかげでね。
そんな彼女も去年永眠したよ。
抱えきれないほどの感謝と若い頃の彼女の似顔絵を添えて彼女を送ったよ。
日が入る縁側で
君に会おう
小鳥のさえずりを聞いて
うたた寝でもしようか