私はバレー部のマネージャーになった。毎日朝練、午後練があり忙しい生活を送っていた。しかし唯一、木曜日の朝だけは練習がなかった。
ある木曜日の朝、
私は8時07分初の電車に乗るため改札口を通った。ホームで電車を待っていると後ろから肩を叩かれた。
「よっ!美月」
『あっ、凌!もーぅ、びっくりしたよー』
「わりぃー。今日は朝練ないのか?」
『ん。木曜だけはないの♪いつもこんな遅いの?』
「おぅ!俺はいつもこの電車!」
『そーなんだー。じゃあ私も木曜日はこの電車にしよっかなぁ♪』
ーっと冗談っぽく言ってみた。すると‥
「いいよ。じゃあもし会ったら一緒に学校行こうよ!色々話したいし!」
『‥うん!』
‥正直、すっごくすっごく嬉しかった!!
‥でも凌はきっと、私のこと妹くらいにしか思っていないのだろうな‥。
「‥おーい、エレベーター乗らないのか?」
『‥今日は部活ないし、運動不足だから階段にしようよ!』
「すげー元気だなー」
けど、それでもよかった。少しでも長く凌と一緒にいられればそれでよかった。
それ以来、木曜日は凌と同じ電車に乗ることにした。いつもエレベーターではなく階段を使った。その方が一緒にいられる時間が長いから‥少ししか変わらないかもしれないけど一秒でも長く一緒にいたかった。
そうした日々が3ヵ月くらい続いたある日‥悪夢は起こった。
10月半ばに行われた体育祭のときだった。瞬はバスケに参加した。彼のチームは次々と勝ち進み、準決勝まで上り詰めた。相手のチームにももちろん強い選手はいたが、到底瞬のチームには敵わないと誰もが思った。試合終盤、2点リードしていたときのことだった。
急に胸を押さえながら倒れた。スタンド席にいた私は立ち上がった。選手が瞬に近付いた。誰かが何かを叫んでいる。誰かは携帯で電話をかけている。保健室の先生が近寄って来た。
まわりはざわめいている。
私は急いで下へと降りていった。そこには凌がいた。
「瞬!!瞬!!!!!!」
凌は呼び掛けている。瞬の顔はみるみるうちに青くなっていく。呼吸も早くなっていく。
‥ピポーピポーピポー。
何人かの制服をきた人が瞬の前に来た。急いで担架に乗せ、体育館を後にする。救急車に凌と担任の先生が乗り込み、引きかえしていく。
ピポーピポーピポー‥。
試合は中断された。私はその場に立ち尽くした。