「ばっかもーん」雷鳴が鳴り響くような大声が地獄にこだました。
針の山もおもわず揺れている。
鬼たちは大声の振動であちこちに吹っ飛んだ。
中には奈落の底に落ちた鬼や、底なし沼に落ちた不運な鬼もいる。
「どうか、お静まりください!」鬼たちは泣きべそをかきながら四方八方に吹っ飛んでいく。
そう、何を隠そうこの声の主こそ地獄の支配者「えんま大王」である。
彼はここ数日あることに腹を立てていた。
えんま大王の宮殿は地獄の血の池地獄の真ん中に浮かぶ島に位置している。
血の池といっても深さはとてつもなく深く、中には肉を食らう化け物のような大きさの地獄の魚が放し飼いになっている。
宮殿にはえんま大王が20メートルはある椅子に座って、部下の青鬼「あおべえ」と声をあらげて話している。
二人の身長差は18メートルといったとこだ。
「なぜじゃ!なぜ地獄に人間がこないんじゃ!」
えんま大王は机に置かれた筆やすずりを吹っ飛ばして喚き散らしている。
「大王様!どうかおやめください!」あおべえが声を張り上げる。
だがそんな声は届くわけもなく、えんま大王は暴れ散らしている。
ちょうどそのころ地獄に一人の人間がやってくるのである。 続く