まだ冬の寒さが残る春。
一人の少女が転入してきた。
秋田の中学からだという。
中学2年生で転校とは、少し悲しいものである。やっと友達と楽しく話せるようになったという頃だろう。かわいそうに・・・。
俺は、その子の紹介をしている間中、そんなことを考えていた。
ふと気がつくと、皆の視線が俺に向いた。
「俺もとうとう人気者かっ」
と思ったが違った。
朝霧 榎乃(あさぎり かの)が、俺の隣の席に座ったのだ。
俺がガッカリして目を伏せると朝霧が話しかけてきた。
「・・・・・よろしく」
俺に向かってにっこりと微笑む姿は、とても可愛らしかった。