羊飼いの少年「ウウ」がセントラル駅を見上げてる頃。
それはちょうど日付が変わろうとしている頃である。
ここセントラル駅は、夜の十二時以降の列車は夜行列車が一本だけである。
駅長のジム・バートンは今日も一日の終わりにこの夜行列車を無事送り出し、アップル・シナモンティーを飲み、家路につく予定であった。
バートンはこのような儀式とも言えるような事を毎日、年月にして35年間も続けてきたのである。
彼は自分の仕事に誇りを持っていたし、一日の終わりに飲むアップル・シナモンティーがなにより好きだった。
「そろそろ列車が着く頃だな」バートンは駅長室の椅子から立ち上がり、35年被っている駅員帽を被った。
駅員帽はとても綺麗に手入れされている。
駅員室の階段を下りる。ふと廃棄物置き場に目がいく。そこにはたくさんのゴミが所狭しと寄り集められている。
廃棄物処理車は日曜に来る。それまでに溢れそうになるといつもバートンが自らゴミをトラックに積み焼却場まで持っていくのだ。
バートンが視線をホームにうつす。夜行列車が着いたようだ。
それと同時にウウもセントラル駅に到着した。
月がホームを照らしていた。