朝もやの東京駅。
肌寒い朝だった。
五月とは思えない肌寒さの中、スーツケースをひとつ引きずって華波は大都会に佇んだ。
急ぐ人に押されながら改札へ歩く。
今から会える高揚感と、両親に対する後ろめたさ。
二つの感情が鼓動を早くする。
「華波!」
大きく手を振る姿に、思わず笑ってしまう。
肌寒い朝なのに、都会には似つかわしくない柄シャツとサングラス。
その奥の優しい瞳。
とうとう来てしまった。
もう引き返せない。
久々に会った嬉しさよりも困惑が勝っている。
今夜のいいわけを考えるのが大変だった。