Z県に向かうことになった龍雅は駅で綾香に出くわす。ふとしたことから綾香と行動を共にするハメになった龍雅は列車に乗り込み、Z県に向かった。
列車アナウンス『えぇまもなく、…Z県に入ります…。』
龍雅は車中、綾香のマシンガントークの餌食となっていた。
綾香「でそいつがぁ〜…あっはっは!」
龍雅は眉を潜めてこう思った。
龍雅(なんてやつだ…。一人で喋って一人で笑ってやがる…。)
その一方で龍雅は窓の外の山間の景色を眺め、こう考えた。
龍雅(同年代でも軍隊上がりの俺達と民間人ではこうも違うとは…。)
綾香は話を突然切換えた。
綾香「ねぇ、龍雅!どうしてこの路線だけ普通の電気で動く電車なの?てっきりリニアかと…。」
龍雅「Z県やその周辺は『旧文明の県』とか『ド田舎』とかで有名なのは知ってるよな?なぜそう言われるかと言うと険しい山と大森林地帯のせいで開拓が何百年も進んでないからだ。電気の敷設も10年前にようやく出来たばかりで『電車』が開通したのも2年くらい前だしな…。」
綾香「げっ!!龍雅…言っちゃ悪いけどそんな所になんの用があるわけ?」
龍雅は目をそらした。
龍雅「大切な物がある。…今はそれしか言えない…。」
綾香は首をかしげた。
列車アナウンス『えぇまもなく、…本位田長柄町(ほいでんながらまち)…本位田長柄町です。お降りのお客様、お荷物等お忘れございませぬよう願います。』
龍雅「さっ、降りるぞ。」
…特急が駅に到着し、龍雅と綾香はホームに降り立った。
龍雅「久しぶりだな。製鉄所で働いていた時は沿岸部だったからここまで入って来たのはいつぶりになるだろう…。」
綾香は目を丸くして言った。
綾香「へぇ、龍雅が自分のこと喋る所初めて聞いたんだけど!」
龍雅は目を細めて真っ直ぐ前を見た。
龍雅「つい無駄なことを…。早速行くぞ。」
綾香「あっ!置いてくなよ!」
龍雅は足早に駅を出てまるで『小京都』を思わせるような町並みを下って行った。人の往来もそこそこはあり、ある程度の活気はある街だと綾香は思った。
しばらくすると突然小さな自転車屋が見えて龍雅はその中に入って行った。綾香は龍雅の予想外の行動に驚いた。
龍雅は奥に向かって大声で言った。
龍雅「こんにちは!ゲン爺さん!龍雅です!ストライカーを取りに来たんだけど!!」