けれども、疑ってしまうのは仕方がありません。
場数を踏んだ女であっても、好きな男がいれば、必ず疑うものでしょう。
信じると言っても心の中では訝しげに眺めている。
誰もがそうでしょう？
佐野の場合、彼が何をしなくても、寄ってくる女はそれはもう数えきれずいたのですから、そんな男を恋人にした私は猜疑心の塊になっていました。
そして、しばしば落ち込んで顔を伏せ、口をつぐんでしまう私を、彼は持て余し始めたのです。
最初のうちこそ機嫌をとり、歯が浮くようなことを言って私をなぐさめてくれたものですが、段々面倒になったのでしょうね。
当たり前のことです。
私と同じように、彼も１７才だったのだから。
まだまだ自分可愛い時期に、いくら恋人とはいえ、他人のことばかりを考えているのは苦痛にほかなりません。
少しずつ距離をとろうとしているのがわかりました。
私は、というと、そのことについてたいして悲しいとは思いませんでした。
むしろ彼が遠くなるほど、私はさっぱりとしたような心持ちになりました。
彼と同じように、彼のことばかりを気にしていた私も、疲れていたのでしょうね。
事実、安堵したのですから。
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