運命の輪11

最上  2006-11-24投稿
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首を掴まれ、異常なまでの力で地から遠ざけられていた優は意識が明晰でなかった。眼は虚ろに動き、焦点となるものを捕捉していない。
これが人間の最期。所詮死とは華々しいものでははじめからなく、あっけないものなのだ。
優は失せゆく意識の中でそのようなことを考えていた。そして−
辺りを火炎が、おぞましい程の爆発が包んだ。
優は死を悟り、目を閉じた。

−動けない。全力で炎をまとった反動で暫く動くことができない。
「逃げた…ようだな。まさかあの状況から逃げられるとは。だが、待っていろ。兄の仇は忘れん。」
火竜のような男はその場をあとにした。
深い闇は落ち着きを取り戻していた。

闇夜を裂く二つの影が月明かりに照らされていた。一つは、先程死にかけた−
「あ…ここは…空?俺、死んだのかな…」
「気付いたか」
包み込むような温もりのある声。顔はちょうど月明かりの陰になって見えない。しかし、空中を移動できるということであれば只者ではあるまい。
「あんた誰?もしかして天使?…それとも、悪魔?だって俺、人を……」
「どちらかかもな。あるいは、両方とか」
微笑みを浮かべる整った顔立ちからは悪魔は想像できない。
優は再び目を閉じた。

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