[ミーンミーン]
虫が鳴いている。
蝉じゃなく鈴虫のようだ。
[ミーンミーン]
[ザワザワ]草をかき分ける音。
「はぁはぁはぁ..] 一人の若い青年はかなり息をみだしている。
かなり疲れているようだ。その身なりは、ボロボロの薄い衣でできた服とズボンは破れ果て原形をとどめていない。
男の首には、銀でできたネックレスをつけているようだ。
ネックレスには‐ (RON)と英語で掘られているようだ。
男は草の茂みに入り一目につかない所を見つけるとたちまちその場に座り、胸に手を押え、息を整えながら、なにやら分からないが呪(まじな)いと思われる印をきり、大の字になり自分の傷だらけの手を掲げていたがたちまちその手を降ろすとその場に眠ってしまった。
「グゴォォォー」ロンというその男はいびきをかいていた。
ロンは何かを感じとったかのように。
飛び起きた‐
自分自身が今こんな場所で大の字になり眠っていたなんてしんじたくないというように、回りを見渡しながらユックリと立上がる。
ロンは村に向い帰ろうかしていたが、
村が騒がしいようだ‐
「なんだ?」
ロンは見晴らしのいい丘に立ち、騒がしい部分を見つめていた。
「なん...だ?」ロンは、普通なら人間が見える範囲は決まっているが、男の目は、それを凌駕しているようだった。
ロンが目を凝らす村人は、何かを退治でもするかのように武器や防具を持ち、威勢のいい声を張上げ、何か言っている。だがロンの耳は普通の人間なら聞き取りきれない物音まで分かる気がした。
自信があった。
そして、不思議に、心が湧き上がるような、力が身体の奥底から湧き上がる感覚がして、興奮しているようだった。
「なんで...こんなに俺は、興奮しているんだ...?」
男はまた村の方を見ると何があったのかを聞き取ろうとしていた。