「なあっ!頼むよ!」 学校から少し、離れた路地から聞こえるうなだれる声の主が、必死に手を合わし頼みこむ。 「嫌だよ!俺ん家、駅と逆だろ?武人たまには、自分の力で何とかしてみろよ!」 幸が呆れながら言う。これを言われた、さきほどの声の主 佐原 武人 幸とは小学校からの仲で高校でもなにかと幸と一緒にいたのであった。 「わかってって!もぅ時間がぁぁぁ!わかった!Bランチでどうだ?」 それが決め手となった。幸にとって学食のBランチは、大きかった。いつもコンビニで買うおにぎりが幸の、お昼の日課だったからだ。一つしかないヘルメットを武人に投げると、慣れた手つきでイグニッションキー、を回しエンジンをかける。「ほら早く乗れよ?」 「わりぃな!」 幸が、渡した白のフルフェイスのヘルメットを被り幸のバイクにまたがった。それと同時に唸るエンジン音。 「ちゃんとつかまれよ」 そう幸が言うと、二人を乗せたバイクは、桜並木を走って行く。 今日は、午前授業…太陽はまだ昇りきってはいなかった。