「はぃッ?あんたを待たしたつもりなんかないんだけど!」 空気を乱す一言。まあ、しょうがない、ここで言葉を返せば永遠の言い合いが続いてしまう。 「呆れたわ…。俺変えるわぁ。」 こういう状況化では早く逃げるのが得策だ。長年の勘だ。こいつと深く絡むとろくな事はない…。 帰る幸の背中を追うがそれも虚しく幸は、バイクにまたがりエンジンをかけ一気に加速する。 「あーぁ、言っちゃったよ!なあ唯、本当に幸と幼なじみかよ?」 「そうよっ?もういいよ!行こ?武人」 手を組み歩き出す二人は、どこにでもいる普通のカップルだった。 日も沈んだ午後7時。 町を一望できる丘に一台のバイクが止まっていた。一つのビルに光が灯りそれが伝染するようにあっという間に、町が光の渦に飲み込まれる。その光に魅了される一人の少年。 幸は毎晩のようにここに足を運んでいた。単に夜景が綺麗だからだとかではなく、この場所に心がひかれていた。それともう一つ。 それは女神のように。