お約束ッぽい展開で驚愕の声を上げる、女の子と稲田。
そして、背景では現状を完全無視して、母親と娘さんであろう女の子が、涙誘う感動的場面を繰り広げている。
[麗遊]「ぁぁ〜〜〜‥‥‥‥ハァッ…ハァッ…‥。あああぁぁ〜〜〜〜ッッッ!!!」
まだやってたのかよッ!?息継ぎするほどなのか??
俺はただ呆然と立ち尽くすしかなかった。
とりあえず、親子にスタンディングオベーションでもしようか‥。
[稲田・父]「君!ソレは、もしか…」
[麗遊]「ぁ〜〜ッ!稲田さん危ないッ!!狙われてます!」
なに!?俺としたことが‥敵の気配に気づかないなんて!手なんて叩いてる場合じゃねーッ!!
[男]「敵はどこだッ!?」
俺は、すぐさま意識を臨戦態勢に移行す‥‥。
[麗遊]「あなた!でしょうがーーッ!!」
[男]「へッ?……………ゴふッ」
まさか、こんな‥オチ…とは……。
〔柔らかいのに、何故か痛い〕モノが、俺の意識を奪った。
[葵]「わん!つー!すりー!‥かんかんかんかん!」
[麗遊]「でゅあッ!」
拳を振り上げる勝利者には可愛い拍手が与えられた。
―――ふッふッふッ!魅たか!
『通信ビデオ空手教室〜この胴着を買ったら恋人ができました!今でも恋人と(中略)…のおかげですよ!編〜』が奥義!
《ラリアット》!!
一撃でKO!
ふふん!伊達に黒帯は巻いとらんのですよ!
でゅあッはは!でゅあッはは!!
[稲田・父]「‥‥彼は、敵じゃありませんよ……」
でゅあッはははは‥は…‥…エッ....?ウソ?
―――どうなったんだ俺……?死んだのか?
ここでスタッフロールか?
ハハッ‥、悪くねー……。カワイイ女の子からラリアット喰らって死ねるなんてな……。
やっと終われる……。やっと棄てれる……。やっと‥お前の…傍に……逝け…。
[麗遊]「あ〜〜ん!すみませ〜ん!ごめんなさ〜い!!」
[男]「ねーよッ!うるせーなッ!!」
気がつくと、眼前にラリアットを喰らわした女の子の泣き顔。頭には、柔らかい感触。
どうやら、膝枕されてるらしい。
[麗遊]「あッ!気がついた!よ、良かったよ〜〜!!!」
[男]「良くない!いきなり人にラリアット喰らわせたり、泣きながら膝枕して詫(わ)びたり、ワケわかんない奴だな〜」
俺は首をゴキゴキと鳴らしながら立ち上がった。
…続きます。