南方の声はどこか暗かった。
山下は不思議に思いつつ、南方の話を聞いた。
「あのさぁ山下、宇宙旅行のチケット俺の分も合わせて二枚もってるよな?」
山下はポケットに入っている二枚のチケットを確かめるように触った。
「うん、二枚もってるよぉ」
南方はなにかが喉に詰まったような声を出して言う。
「どうせ山下のことだからポケットに乱雑に入れてたりするんだろ?」
山下は思わずハッとした。
それに感づいたように南方は言う。
「ほらみろ、おまえにチケットを持たせると不安でしかたないんだよなぁ」
山下は不意をつかれた気分になる。確かに自分はよく物やらなにやらを失すので、このチケットも過言ではない。
「だからさ、その二枚のチケット俺が持っててやるからこっちに送ってくれよ」
南方はやれやれと言う感じである。
山下はそういうことならと何の疑いなしに承諾した。
「んじゃまたな」
南方が電話を切った後、山下は早速ポケットの二枚のチケットを物質転送装置の中に入れた。
山下は粒子になって送られていくチケットを眺めていた。
まさか自分が騙されているとは夢にも思っていなかった。
続く