ミユキはこれから何年も旅するような大荷物を小さい体で支えていた。
「おはよっ!」笑顔いっぱいのミユキが挨拶する
「うん」南方はそれが精一杯の返事だった。
ミユキはどうしたの?と言ったたぐいの顔をして聞いた。
「エバラクくん元気ないね、さては昨日寝てないでしょー」
南方はミユキの言葉に応えず言った
「ごめん、きみとは行けない…」
ミユキは言葉を失った。そしてしばらく沈黙が続いた……
南方はうまいこと言おうとしたがなにも出てこず、ただただ「ごめん」と言い続けた。
彼女はしばらく下を向いていたが急にけろっとした顔をして言った。
「で、チケットはもっているのね?」
南方は一瞬戸惑ったが、確かめるようにチケットをトランクから出した。
するとミユキは信じられないことを言い出した。「よかったぁー、これでもしチケットがなかったら本当にあんた用なしだもんねぇ」
ミユキは笑っている。
えっ?…南方は唖然としている。
そして意気なり後ろの方でゴンという鈍い音がする。
目の前が大きく波打った
ミユキの笑った顔がゆがむ。
そう、自分は後ろから何者かに殴られたのだ。
膝が床につきドサリと体が倒れる。
床はひんやり冷たかった。