【ナイト・オン・ドラグーン】封印の紅、背徳の黒。Story†25

ミルクボーイ  2006-11-27投稿
閲覧数[526] 良い投票[0] 悪い投票[0]

塔の最深部に剣士の格好をした男が無言で祭壇の前に立っていた。
彼は祭壇にある蒼い宝玉を見つめていた。
蒼い輝きを放つそれを触れようとするが、
手を止めた。
うかつに触れて、壊れたりしたら一大事である。
この蒼い宝玉は紛れもなく、五つある封印の鍵の中の一つ。『神水の鍵』
そして自分はこの鍵の守護者。
鍵壊れる時、守護者もまた命断つ。塔の守護者に任命される時、彼は封印騎士団長ジークにそう言われた。
原理はわからないが、封印の維持には何かの犠牲とその守護者の命を繋ぐ事により封印は成り立っているらしい。
厄介なもん抱えたと、男は苦笑した。
しかし、蒼玉を見ていると不思議に心が鎮まる。
こうして、眺めている時だけ自分の中の狂気や殺意を消し去ってくれる。
血の色しか映していなかった瞳も澄んだように感じとれた。

すべてを消し去ってくれるかのような…そんな気がした。過去の記憶さえも。


小さな漁村で男は産まれた。
両親の愛情を必要以上に受け、村人たちからも愛され、何不自由なく彼は育った。
その頃、連合軍と帝国軍による衝突で各地に戦火が上がっていたが、彼の村だけは田舎とゆうだけあって戦火に巻き込まれずに済んだ。
そして18年間の月日が流れ、男はいっぱしの剣士へと成長した、そんなある日。

男はいつものように村の外れの森の中でで剣の鍛練をしていた。
村へと続く帰り道、彼は目を疑った。
辺りは薄暗いはずなのだが、村の方角だけ妙に明るい。
火でも上がっているような、しかし煙が立ち上っていた。
(父さん!母さん!)男は村へと駆け出した。
村に着くや否や、いきなり一人の大男が襲いかかってきた。
彼はそれを難無く躯し、剣を抜き血祭りに上げた。断末魔の叫びと共に倒れる。
村はどうやら山賊達に襲われているようだった。
火を放ち、金目の物を奪い、抵抗する者を殺戮していた。
山賊達は村人を手当たり次第襲っていた。足元に転がる無数の村人達の骸が状況を物語っていた。
一直線に自分の家へと疾走する。
が、足を止めた。
目先で見覚えのある姿が、重なるように斬り伏せられていた。
男は駆け寄り、必死で父と母の名を叫んだ。応答がない。
両親は既に事切れていた。
全ての村人を手に掛けたのか、山賊達が最後の村人の彼を囲んでいた。

i-mobile
i-mobile

投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 ミルクボーイ 」さんの小説

もっと見る

ファンタジーの新着小説

もっと見る

[PR]
翌朝ぷるるんっ!!
★オールインワンゲルH★


▲ページトップ